【書評・レビュー・感想】「めぐる88」を読み解くスキルが僕らにないのか!?

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ちょっとだけ、今回は厳しめのレビューです。

岡本一広さんの「めぐる88」ですが、3度読みするだけの価値のあるすばらしい本です。

 

内容がすごくいい。

 

だというのに、すごく地味に宣伝しています。

まず、何がダメって帯がダメです。

 

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これが、元の帯ですが......。

「ちょww」ってなりません。

せっかくの、読めばすばらしい内容なのに、まず、手にとって興味をひいてもらわないと、まず厳しいし、そもそも、内容の核心的な部分を貫いていませんよね。

 

 

20年前のアウトドアブームなら、この帯で十分フックはありましたが、そもそも、今の若者は旅をしない。

 

そういう、「え? 孫悟空って、ドラゴンボールがもとじゃなかったの?」世代をフックをするには、

「やや"あざとく"踏み込んだ方がいい」、と思いました。

 

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とりあえず、ぼくが10分で考えて、帯を掛け直しました。

 

めぐる88は、 友近太一が「三蔵法師」、生名ハルカが「沙悟浄」、そして、リチャードが「猪八戒」の「典型的な、冒険の中で悟りを目指す「西遊記タイプのストーリー」なんですから、もう、隠さないでバーンと出しちゃいましょう。


ゼロ案です。


ここから、さらに今っぽい言葉をチョイスしてキャッチコピーを考え、なんとかツイッターでリツイートされたり、ネットで情報拡散されるフック、口コミ・スキルを与えてあげなければなりません。


そう。悲しいことに、これが現実。


①にコンセプトとフック、②に絵(テキスト) ③が内容。これが、ものが売れていく掟。

これを、もうちょっと意識すれば良かったかも知れません。

 

 

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「めぐる88」の読書感に、近いのは瀬戸内寂聴の「釈迦」、または、瀬戸内寂聴・瀬戸内晴海の「我が性と生」です。

 

「釈迦」は、宗教的な神である「釈迦」を一人の人間として描き、釈迦になる前の「菩薩レベル」のブッダが入滅までの道程で自らの、欲にまみれた反省を振り返る「釈迦自身の自分探しの書」です。

そして「我が性と生」は、瀬戸内晴海(=寂聴さんの前のペンネーム)に、瀬戸内寂聴自信が脳内インタビューをすることにより、同じく自分の中で行った「自分探し」を振り返り著作です。

 

こういった、何度も登場する自己発見をテーマにした書に目を通してから、

我々なら、太一に、ハルカに、どんな自己発見をさせるだろうかという「作る側の舞台装置で、登場人物をどう造形していくのか」というテーマを、編集と著者がもっとセッションすれば良かったなぁと思います。

 

 

作家は編集によって、飢えもするし、潤いもします。


編集さんと作家が車輪の両輪であることは、そして、作家にとって編集がどれほど、毎日の頭痛の種で、ライバルであるか......、おそらく漫画や文章で本を出しているクリエイターならわかるんじゃないかなぁと思います。

 

 

 

実のところ、

おそらくこう言った作業はあらかじめやっておき、西遊記みたいなテーマ性を自分なりに表現しちゃった、苦悩の天才監督がいます。

 

 

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「OVERMAN キングゲイナー / 富野由悠季」です。

 

アナ姫という三蔵法師のおおらかな慈母の中で、主人公のゲイナー(孫悟空)と、ゲイン(孫悟空)が旅をして「涅槃への悟り(=エクソダス)」を目指すという作品でした。

 

ここでは、究極の煩悩を「オーバー・デビル」というものが、駆使する「オーバー・フリーズ(=超煩悩・ネガティブ性)」で暗喩されます。

そこからの脱出手段として、兄貴分であるゲインが心の声である「プラネッタ(=伝心)」をつかって自己解決のきっかけを提示し、主人公のゲイナーが「オーバー・ヒート(=解決法・自己超越)」によって、エクソダス(=涅槃の境地)への道を開いていきます。

 

 

こういった「むつかしい」事をちょっと考えずに考えつつ、作っている側が勝手に考えておけば、もしくは、感性で表現できていれば、どんどん作品は良くなっていくと思います。

もっとも、監督はここに来るまで、大ブレにぶれちゃってるようですが......。

富野監督自身も悟りのために、スポンサーとの間で苦悩を繰り返した人なんだなぁと実感が湧いてます。ハイ。

 

 

 

ともかく、

コレはあくまで僕の提案なんですが。

 

 

僕が、「めぐる88」に、もう少しだけフックを与えるなら......

 

 

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主人公は「三蔵法師」にしておきます。(友近太一ではなく本名)

 

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「生名ハルカ」の本名は、「四国遍路では、おのおのの過去は聞かない」という法則から「明かしたくない」、だから「沙悟浄」としておきます。

 

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同様に、「リチャード」は、「猪八戒だからチョー」でいいです。と、あえて、3人の「対立」を提示しておきます。

 

 

隠す。

だから、物語に厚みが産まれていく。

そんな手もあったんじゃないでしょうか。

 

 

この提案は、あくまで「売るために、どうしても、すけべえ心を出さざるを得ない、エロ業界でなんとかやってるエロライター」の、

完全に煩悩まみれ、策略まみれ、嘘でもいいからかってちょーだい! な、功利主義的な考えとなります。

岡本一広先生に適用するのはそれこそ「いらぬ、お接待」だと思います。

 

 

にしてもくやしい。

なにがって!?

 

 

 

僕が、一番本当に悔しいのは、

岡本一広さんの、この、素直なアウトプットに共感できる、日本人の良心が老若男女からどんどん薄まっていることです。

 

めぐる88のよいところは「札所の霊験」が、まったく無視されていることです。(=現在四国遍路の実質的な形骸化の暗喩に作者は思えます)

これは、旅番組じゃないニダ!

悟りへのピースを与えてくれるのは「四国という風景」「道中の人々」「一緒に旅をする仲間達」です。

 

 

岡本先生は、四国の良さをほんとうに肌で感じられておられて、自己理解があるのかないのかネームを切っています。

それは、僕が四国が好きになりそうな、まさに本質だと思います。

 

めぐる88は確定的な名作ですので、まずはこの二冊を読み、瀬戸内寂聴の二冊をちょっと読んで、そして、遍路をしてみましょう。

 

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